きものの里探訪記 第二弾 宮古上布の里 宮古島にて
きものの里探訪記第二弾 宮古上布の里 宮古島にて 宮古織物事業協同組合を訪ねて
きものの里探訪記第二弾は、石垣島のお隣の島、宮古島の宮古織物事業協同組合に専務理事の上原則子さんを訪ねました。 上原さんに、宮古上布について、いろいろな角度からお話を伺いました。
まず、最初は宮古島の素晴らしさを紹介します。 石垣島とはプロペラ機で約30分ぐらいの距離にあるサンゴ礁が隆起して出来た島です。 したがって、全体的に平坦で高い山などはありません。また、ハブのいない島です。 山がないので、雨の後に山の土が海に流れ込むこともありません。 したがって、宮古島の海は、宮古ブルーと呼ばれ、初めて経験する青い海でした。 同じ先島諸島でも、石垣島とはずいぶん違う雰囲気の島です。 また、周囲の池間島・来間島とは海橋でつながっています。一番大きな伊良部島とも2012年の開通を目指して海橋の工事が進行していました。
【宮古島】 | |
宮古ブルー | 池間大橋 |
【宮古上布】
まず、歴史的視点から宮古上布を見てみます。
薩摩藩が琉球を侵略した時代、税金として宮古上布を収めさせ、『薩摩上布』という商品名で全国に流通していました。
やはり、宮古上布も八重山上布と同じく、貢納布として歴史に名を残しています。
『藍染めの十字絣』が宮古上布の最大の特徴です。
きぬた打ちを行うことで大変艶のある生地に仕上がります。
【宮古上布の要件】
宮古上布には、その冠を得るために非常に厳しい条件が課せられています。
1.経、緯糸に手績み苧麻(ちょま)糸を使用すること
2.染めは藍染であること
3.絣は幾締め又は手括りによる十字絣であること
4.手織りの平織りであること
八重山上布においては、緯糸は手績み苧麻(ちょま)糸を使用することが要件ですが、経、緯両方の糸を手績みであることという条件は、非常に厳しい条件であると感じました。 こんなに厳しい条件があるが故に宮古上布の生産数量は1年で20反前後だそうです。 とても稀少価値がある着尺ではないでしょうか。
【宮古上布の生産工程】
1.糸作り
着尺を織り上げるためには非常に細い糸が必要となります。 やはり糸の紡ぎ手は減ってきているそうで、『苧麻糸手積み技術保存会』が中心となり、細く紡ぐ技術を伝承しているとのことです。 細い糸を使って織り上げるので目付はなんと500g程度ととても軽く仕上がります。
2.絣括り
絣になる部分を計算し、手または締機(しめはた)で絣模様を括ります。
3.藍染め
琉球藍に泡盛や苛性ソーダを入れ発酵させて染料を作ります。 黒に近い藍色になるまで何度も染めます。 ここまで染めると水洗いしても色落ちすることもなく、色止めに化学薬品を使うこともないそうです。 しかし、染め上がるまでには何日もかかります。
4.機織り、きぬた打ち
一人前の織り手になるには10年の歳月がかかります。気の遠くなる時間ですね。 織り上がった反物に薄く糊をかけて、5Kgほどの重量の木杵で、生地に艶が出るまで2万回程度たたきます。 実際に持ってみましたが、非常に重かったです。こんな木杵で2万回も叩くなんて想像出来ません!(和 店主の感想)
この後、厳しい検査に合格した製品だけが、『宮古上布』の冠をつけることが出来るのです。 一反を織り上げるのに、糸の紡ぎの時間を含めると約一年もの歳月を要します。 機械化がどんどん進むアパレル業界の中、宮古の織物は昔からの伝統を守り続けているのです。 日本の文化を大事にしたいものです。
【編集後記】
宮古織物事業協同組合 専務理事の上原則子様、下里昌博様 今回の取材を快く受け入れていただきまして本当にありがとうございました。この場で厚く御礼申し上げます。
上原さんにいろいろとお話を伺い、ますます宮古上布が好きになってしまいました。
これからも、宮古上布の伝統を守り抜いてください。 陰ながら、応援していきます。
きものの美 和
店主